水師営の会見


作詩 佐々木信綱  作曲 岡野貞一
尋常小学読本唱歌(十巻) 明治43年7月
 旅順開城 約成りて
 敵の将軍 ステッセル
 乃木大将と 会見に
 所はいずこ 水師営

 庭に一本(ひともと) 棗(なつめ)の木
 弾丸あとも いちじるく
 くずれ残れる 民家(みんおく)に
 今ぞ相見る 二将軍

(間奏)

 乃木大将は おごそかに
 御めぐみ深き 大君の
 大みことのり 伝(つと)うれば
 彼かしこみて 謝しまつる

 昨日の敵は 今日の友
 語る言葉も うちとけて
 我はたたえつ かの防備
 かれは称(たた)えつ 我が武勇

(間奏)

 かたち正して 言いいでぬ
 「此の方面の 戦闘に
 二子を失い 給(たま)いつる
 閣下の心 如何にぞ」と

 「二人の我が子 それぞれに
 死所を得たるを 喜べり
 これぞ武門の面目」と
 大将答え 力あり

(間奏)

 両将昼食(ひるげ) 共にして
 なおも尽きせぬ 物語
 「我に愛する 良馬あり
 今日の記念に 献ずべし」

 「厚意謝するに 余りあり
 軍のおきてに したがいて
 他日我が手に 受領せば
 ながくいたわり 養わん」

(間奏)  
 「さらば」と握手 ねんごろに
 別れて行くや 右左
 砲音(つつおと)絶えし 砲台に
 ひらめき立てり 日の御旗